ネパール・カブレ郡 教員の指導力向上を通じた、算数教育推進事業
対象地域
ネパール:バグマティ州カブレ郡 モンドン・デウプル市 第11区
背景
本事業は、ネパール山間部カブレ郡の公立学校3校を対象とする。同国では都市部と農村部の教育格差が深刻で、その要因は校舎や教材といった物的条件だけでなく、教員の指導スキルや専門性の差にある。教員養成制度の不十分さや就職後の体系的研修の欠如により、多くの教師が初任時の知識や指導法を更新できないまま授業を続けている。教師の学びが止まれば、子どもの学びも停滞せざるを得ない。この影響は学年が上がるにつれて顕在化する。10年生で受験する全国統一試験(SEE)で高得点を取る生徒は限られ、理系進学者も極めて少ない。その結果、国内で安定した職に就けず、中東などへの出稼ぎを選ばざるを得ない状況がある。近年は日本への留学生も増えているが、基礎学力不足により学業や就労で困難を抱える例もみられる。
これまでの活動から、特に初等算数教育の課題が顕著で重要だと明らかになっている。2020年のNASA(National Assessment of Student Achievement)では、基礎教育8年生の平均到達度は2017年を下回り、67.9%が6段階中レベル3以下に留まった。山間部などアクセス困難な地域ほど到達度が低く、都市部との格差も明確である。多くの教室では一斉授業で計算手順の暗記が重視され、数概念を十分理解しないまま学年が進むため、内容が高度化するにつれてつまずく子どもが増える。これは中等・高等教育での学習困難や将来の進路制限につながっている。
背景には、@農村部と都市部の教師間の情報・経験格差、A教員養成・研修制度の未整備、B授業方法の画一化、C数概念に基づく指導の未浸透、D慢性的な資金不足がある。本事業は、専門的知見に基づく継続的な教師研修を通じ、農村部の教師が授業を振り返り改善し続ける力を育成することを目的とする。算数教育の質的転換を教師教育の面から実現し、貧困の連鎖を断ち切り、子どもたちが生まれた環境に左右されず将来を選択できる社会を目指す。
事業内容
1. 対面による教員研修(農村部3校の教員6名を対象、年3回。約300人の児童が間接的に裨益)
2. 授業研究の考えを取り入れた実践共有
3. 数の概念理解を支える教具の提供・活用
4. オンラインによる継続的フォローアップ
5. 農村部教育改善モデルの整理





